あらまほしき研究者~第8話 コンピュータ  2010/11/01

 研究者に限らず、多くのビジネスマンにとって、コンピュータはもっとも大事な道具と言って良いだろう。私は研究者としてのこだわりで、コンピュータを自作することにしている。一番よく使う道具でありながら、他人が作ったブラックボックスを使うのでは情けない。また、自分の気に入ったパーツを使って走りの良い高性能なマシンにしておきたい。作ってみるとプラモデルを組み立てる程度の簡単さだ。CPU、HDD、メモリ、各種ケーブルなどの役割がわかって良い。また、新しく組み替えるときにも多くのパーツがそのまま使えて、無駄がない。

 PC電源は規格がほとんど変わらないので、長年、使うことができる。パーツショップで見ることができるが、「安全回路搭載」とか、「100%日本製コンデンサ使用」を売りにしている製品がある。よく聞くことだが、海外のコンデンサ製品は粗悪品なのだろうか?信頼できる評価結果は知らないが、私の研究室で実例があった。海外製の装置に付いてきたPCが故障した。原因は電源のようである。取り外して、電源を解体したところ、本当にコンデンサが破裂していた!幸いにも電源以外の被害はなく、類似の日本製電源に取り替えることで修復できた。安全という観点では値段が高くても品質の良いPC電源を使いたい。

 冷却・静音技術の進歩もめざましい。コンピュータは熱を発する部品が多い。私のコンピュータには4つのファンを付けているが、「超静音」(!?)仕様なので、ほとんど音がしない。仕事に集中できてとても良い。電源とCPUとを循環水で冷却する水冷装置もある。また、CPU、メモリ、グラフィックカード、HDDにそれぞれ熱電対を貼り付けて温度モニタを行い、規定値を超えると自動的にシャットダウンする機能を持つマザーボードを使ったことがある。今年の猛暑で頻繁にシャットダウンすることがあり、調べたところ、CPUと放熱板との間のグリースが干からびていた(修理費50円以下)。各部の温度に応じてファンの回転数が変わるような機能を持つものもある。市販のコンピュータでは味わえない、おもしろい安全技術だ。

 自作コンピュータは盗難防止という点でも良いと思う。かさばるので持ち歩いたら目立つし、商品価値がない。盗難といえば、ノートPCの方が狙われやすいだろう。残念ながらノートPCを自作したことはない。各社共に軽量化やスリム化が進んでいるので、今後も「手作り」というわけにはいかないだろう。職場のノートPC盗難対策として提案がある。商品価値をなくすべく、消えないペンキペンで名前を書いたらどうか?デコ電(きらきら飾った携帯電話)のように。レーザーマーカーで産総研の刻印をするのも良いかもしれない。ビジネスでもっとも大事なものなので、発火、故障、盗難、情報の漏洩等に万全に対処したい。